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☆彼の事☆
「はぁ~よく寝た。」
気持ちの良い朝陽がカーテンの隙間から差し込んでいた。
すっきり目覚め、さぁ学校にいく準備をしよう。
「こらぁ~詩ぁ~早くしなきゃ遅刻よ?」
お母さんの喝で時計を見ると、
「やぁっばぁ~。」
焦りに焦り…。ギリギリセーフ?
家から学校までは、歩いて30分。
学校迄の道のりは、桜並木や銀杏並木があって、ゆっくり散歩するには最適。ここを散歩するのが大好きだから、勉強を必死で頑張って今の進学校に進んだ。
と言っても、A組~C組は学力別で分けられたクラス。
私はもちろんギリギリの成績だから、これからがきっと大変だろうなぁ~。って他人事(笑)
キレイな桜並木を堪能する間も無く(涙)猛ダッシュ…。
息を切らして下駄箱ついて、しばらく息を整えるためにしゃがみ込んでいた。
ん?
何だか視線を感じる…。
スッとハンカチを出され、ゆっくり見上げると、
嫌な奴…。
「汗、拭きなよ。雨女さん。」
そう言って、私の横にしゃがみ、私の手のひらにキレイにアイロンのあたったハンカチを置く。
え?
彼はキレイな瞳で意地悪に微笑して行ってしまった。
胸の奥が暖かくなって、同時にキュッと胸が締め付けられた。暫くハンカチを見つめて、ぼんやりとしていた。
「あ~っ、ヤバイ遅刻だぁ~。」
ハンカチを制服のポケットにしまい、教室に飛び込むと、
「高梨さん、初日から遅刻とはいい度胸だ。」
担任の松田先生の引きつった顔が見えた。
しょんぼり「すいません。」と小声で言って、席に着いた。
あんな事がなかったら、間に合ったのに。
でも…。何だろこのドキドキ。ポケットの中のハンカチをギュッと握りしめた。
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