第3章

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気がつけばすっかり暗くなって、ちょっと冷えてきた。 「私、雨女さんでも、雨子でもないから。」 葵君を睨みつけて、冷たく言い放った。 「ごめん。」 葵君はペコリと頭を下げて言った。 な、何? 「私の名前は、高梨 詩。起こしてくれたのに、私の方こそごめんなさい。」 葵君は顏をあげて、まばゆい程の笑顔を向けてくれた。 ドキッ…。 心臓が飛び出しそう。 柔らかそうな髪が風に揺れ、吸い込まれそうな瞳の中に私がいる。 どれくらい見とれたのか…。 葵君は優しい声で、 「俺は、葵 春人。宜しくね。詩ちゃん。」 ボッ(顔真っ赤)。いっ、今詩ちゃんって…今迄みんなから男みたいとイジられてた私。ちゃんだなんてぇぇ~(驚)。 顔から火がでるとはこの事なの? 葵君の手がそっと、私の手に触れた。 「冷たい手。そろそろ帰ろう。詩ちゃん。」 何時の間にか繋いだ手に意識が遠のきそうになり…。 でも優しい笑顔で話す、彼の横顏から目が話せなくなって。 家迄の道のり。 大好きな桜並木の映像はちっとも覚えて無くて。 ただ葵君の笑顔だけが私の心の中に暖かく刻み込まれた。
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