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気がつけばすっかり暗くなって、ちょっと冷えてきた。
「私、雨女さんでも、雨子でもないから。」
葵君を睨みつけて、冷たく言い放った。
「ごめん。」
葵君はペコリと頭を下げて言った。
な、何?
「私の名前は、高梨 詩。起こしてくれたのに、私の方こそごめんなさい。」
葵君は顏をあげて、まばゆい程の笑顔を向けてくれた。
ドキッ…。
心臓が飛び出しそう。
柔らかそうな髪が風に揺れ、吸い込まれそうな瞳の中に私がいる。
どれくらい見とれたのか…。
葵君は優しい声で、
「俺は、葵 春人。宜しくね。詩ちゃん。」
ボッ(顔真っ赤)。いっ、今詩ちゃんって…今迄みんなから男みたいとイジられてた私。ちゃんだなんてぇぇ~(驚)。
顔から火がでるとはこの事なの?
葵君の手がそっと、私の手に触れた。
「冷たい手。そろそろ帰ろう。詩ちゃん。」
何時の間にか繋いだ手に意識が遠のきそうになり…。
でも優しい笑顔で話す、彼の横顏から目が話せなくなって。
家迄の道のり。
大好きな桜並木の映像はちっとも覚えて無くて。
ただ葵君の笑顔だけが私の心の中に暖かく刻み込まれた。
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