第三章・好きになった人

28/29
前へ
/30ページ
次へ
「なぁ、真央」 ようやく悠馬が振り返った。その表情は明るく、今さっきまでの出来事などまるでなかったかのようだ。 「真央、もうすぐ誕生日だったよな?」 「誕生日…。あ、忘れてた」 「なんだよ、自分の誕生日忘れる馬鹿がいるか」 つかつかと歩み寄って来た悠馬に軽く頭をごつかれ、私は「もうそろそろ忘れたい年頃なの」と反論した。 「でも、よく覚えてたね」 「だってうちの職場は誕生日休暇があるだろ。勤務表を見ればわかるさ」 「そうだったね」 本当にすっかり忘れていた私を、悠馬がまたからかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加