くらやみせかい。

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「遂に辿り着いた…」 紫色の禍々しい空、ぽろぽろして栄養価の少ない土。 そんな土地にある無骨な石造りの城。 その巨大な城門の前に一人の男が立っていた。 青を基調とした丈夫な布を使った服に身を包み、同じ色の瞳は透き通って美しい。 本来ならば陽光を受けてキラキラと輝く金の髪をひとつに束ね、無骨には程遠い整った顔は決意に満ち溢れていた。 男の来訪を分っていたかのように開けるのに苦労しそうな城門は重々しい音を立てて開く。 どうやら男は呼ばれているらしい。 男はにやりと笑みを深めて歩き出した。 招きに応じるようだ。 城壁を潜り抜けると殺風景だがしっかりと舗装された岩石でできた道に、寄り添うようにガーゴイルの石像が等間隔に並んでいた。 今にも動き出しそうで瞳に埋め込まれている紅玉が不気味な光を放っている。 男は警戒しながらも前庭を進んでいく。 そうしているうちに城本体が見えてきた。 城壁と同じく無骨な石造りの城は堅牢さの面で言えば完璧だっただろう。 けれど、歴史ばかりを色濃く感じさせる城は、手入れも行き届いていて不自然だった。
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