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「…え…?」
燦々と光が降り注ぐ。
美しい花々が咲き乱れ、蝶がひらひらと跳んでいた。
小さな森の様にも、手入れされた花畑の様にも見える美しい場所。
魔王城にこんな場所があるなんて思いもしなかった男はしばし呆けていた。
正気に戻り、後ろを振り返ると、其処には扉はなかった。
仕方なく男は草を踏みしめて歩く。
血に汚れた男にとっては不思議と心安らぐ場所だった。
こつん。
男のブーツが石を蹴った。
よく見れば土が盛ってあり、その上に大き目の石が乗せられている。
それが寄り添うように二つ存在した。
どうやらそのうちのひとつを蹴ってしまったようだ。
男は屈んで土の上に石を置き直した。
閉じられた世界で生まれ育ってきた男でも知っている。
これは墓だ。
男よりも先に誰かが来てこの城の主、魔王に殺されてしまったのだろうか。
男は墓に向かって祈りを捧げた。
男も今日この日この人たちと同じことになるかもしれない。
男は祈りを終えると立ち上がり、再び歩き出した。
其の男の目の前に、またしても扉。
男はそれを押し開けた。
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