夢の花

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誰かが翔(かける)と自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。 柔らかい風が頬を撫でていく。 重い瞼がゆっくりと軽くなっていく。 目を開けると綺麗な青空が広がっていた。 ゆっくりと起き上がり辺りを見渡すと、そこは色とりどりの花が咲き乱れた花畑だった。 ぼーっとしたまま、ただその景色を見つめる。 風に揺れる花々が小さな音を奏でていく。 (……こんな穏やかな気持ち初めてだ) 深呼吸をし肩の力を抜く。 何か重くのしかかっていたものが消えていくような気がした。 「……って!!!」 今度は何かが切れたようにガバッと立ち上がる。 「こっここどこだよ!?えっ真面目にここどこ!?」 建物一つなく広々とした花畑のみが広がっている。 人っ子一人いる気配もない。 「もしや俺……不法侵入してる!?」 ここに来た記憶どころかほぼ記憶がない。 思い出そうと考えても出てくるのは黒い闇。 「俺こんなメルヘンチックなとこくるはずねぇしっ!!………………多分……」 あんなに落ち着いていた気持ちはどこへやら。 さっきから急に胸のバクバクが止まらない。
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