9人が本棚に入れています
本棚に追加
誰かが翔(かける)と自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
柔らかい風が頬を撫でていく。
重い瞼がゆっくりと軽くなっていく。
目を開けると綺麗な青空が広がっていた。
ゆっくりと起き上がり辺りを見渡すと、そこは色とりどりの花が咲き乱れた花畑だった。
ぼーっとしたまま、ただその景色を見つめる。
風に揺れる花々が小さな音を奏でていく。
(……こんな穏やかな気持ち初めてだ)
深呼吸をし肩の力を抜く。
何か重くのしかかっていたものが消えていくような気がした。
「……って!!!」
今度は何かが切れたようにガバッと立ち上がる。
「こっここどこだよ!?えっ真面目にここどこ!?」
建物一つなく広々とした花畑のみが広がっている。
人っ子一人いる気配もない。
「もしや俺……不法侵入してる!?」
ここに来た記憶どころかほぼ記憶がない。
思い出そうと考えても出てくるのは黒い闇。
「俺こんなメルヘンチックなとこくるはずねぇしっ!!………………多分……」
あんなに落ち着いていた気持ちはどこへやら。
さっきから急に胸のバクバクが止まらない。
最初のコメントを投稿しよう!