貴族の夜会

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◇ 「いい? 十九の刻ぴったりからお客様のお出迎えよ。お辞儀の角度は?」 「四十五度です」 「そう、ちゃんと規則集は読んでるみたいね。頭を下げるときは少し早めに、上げるときはゆっくりと、忘れないでね」 「はいっ!」 「うん、良い返事。だけど、ご主人様やお客様の前では『かしこまりました』だからね」 「あっ、は……じゃなくて、かしこまりました、シャーレ先輩」 「やだっ、私の前では『はい』でいいわよ。それと先輩もいらないわ。それじゃ、そのワゴン、水晶の間までよろしくね。あっ、そういえば、そのゴブレット、一個でも落としたりしたらお給料吹っ飛ぶだけじゃ済まないから気を付けてね」 「ふぇ!?」 (ゴブレットって、このグラスだよね。これっていったいいくらするの!?)  ラゼットは銀色のワゴンを押す手のひらにじんわりと冷や汗をにじませた。
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