貴族の夜会

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「お疲れさん~、思ったより早かったな。今日の晩飯はパンと新鮮な冬野菜のサラダにオニオンスープ。メインはネジレツノウシのステーキだぜ。これ、俺が狩ったやつ。うまそうだろ?」 「あぁ、良い香りだな」 「そうだろう、そうだろう。お前は三枚食えよ」 「……善処する」 「そうしろ、そうしろ」  へらへらと、見ている方が気の抜けるような笑みを浮かべながら食卓に料理を運んでいくのは、ルッケンス家の料理長であるハルだ。  この頃漸く、自然と敬語無しの喋り方をするようになったハルはどこかご機嫌な様子だ。  一般的にはかなり遅い夕食なのだろうが、ハイドとハルともう一人にとってはいつものことだ。  だが、そのもう一人は今日はいないらしい。  それぞれが多忙なため三人揃うことはまれなのだが、今日は二人での夕食のようだ。 「今日はマスターは仕事なのか?」  ハイドは食卓につき、用意された二人分のコップにレモン水を注ぐ。  テーブルクロスと同色の深い青のエプロンを外したハルも、よいしょっと声を漏らしながら椅子に座った。 「あぁ、今日は外で食べるらしいぜ。ドレスがどうとか言ってた。ハイドも明日はお偉いさん方とパーティーだろ? まぁ、色々頑張れよ」  ハルはからかいを含んだ軽い口調でそう言うと、切り分けたステーキを口に放り込みもぐもぐと咀嚼した。  うますぎる、俺って天才だなとかなんとか呟いている。
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