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『お偉いさん方とパーティだろ?』
――そういえばそうだった。
「……気が重いな」
ハイドは眉をしかめながら、スープに口をつける。
木のスプーンで掬ってこくりと飲み込むと、絶妙な塩加減で美味だった。
ハルの料理を食べるたびに思うことだが、彼はかなり腕の良い料理人だ。
筋があって固い肉でもハルの手にかかれば、とろけるように柔らかい極上のステーキになるのだから。
いっそのこと、料亭でも開けば良いのではなかろうかとハイドは常日頃から思っている。
ハルの料理の腕なら、肥えた舌を持つ者にも通用しそうだ。
そう例えば貴族のような――。
ハイドは無意識に眉間の縦皺を深くする。
(……憂鬱だ)
「おいおい、そんな不味そうに食べんなって」
「不味くない。美味だ」
「そんな顔で言われても説得力ねぇけどな。まぁ、いいや。味わって食えよ。肉食べろ、肉」
「あぁ」
ハイドはレモン水を一口飲んでから、ハルが狩ってきたのだという肉にナイフを入れた。
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