貴族の夜会

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 それはさておき、帝というのは、この叙爵という制度により、貴族と王族だけが出席できる御前会議に関与する権利を得ることができる。  つまりは国政に口を出せるようになるということだ。  その上、魔物の脅威を振り払ってくれる英雄のような存在である帝というのは民からの信頼が絶大だ。  ハイドは叙爵を拒んでいるが、もし総帝が叙爵を受け入れたとなったら圧倒的人気の新たな公爵が誕生するということで、それが貴族間の勢力図に与える影響は計り知れない。  以上のような理由から、将来の権力者になるかもしれない総帝のもとへは、今の内から媚びへつらっておこうという考えの貴族から、または総帝を牽制して格の違いを見せつけておこうという悪意ある貴族から、園遊会やら舞踏会やらの招待状が山のように届くのである。  そして、貴族になれば現場で動きにくいという理由から叙爵を断っているハイドは依然として庶民でしかないわけで、貴族からの申し出を庶民は断りづらい。  断れないわけではない、あくまで断りづらい、だ。  実際に、貴族の中でも身分の低い家からの誘いは、何度届いても容赦なく断っている。  ただ、誘いを断ったことによって貴族の怒りを買ってしまえば、所属ギルドの≪妖精の箱庭≫に被害が飛び火する可能性があるので、家柄や権力の大きさ、また当主の性質によっては様々な会に参加せざるを得ないこともある。
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