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花びらの真ん中で包まれるようにして眠る妖精の、凝ったレリーフが施されたグラスもといゴブレット。
(銀貨いっぱい? もっとかな……。まさか袋がぱんぱんになるくらいの金貨とか)
ちゃんとした値段はわからない。
だけどどっちにしたって、目が飛び出てもう元に戻らないくらい高いに決まってる。
(落としちゃだめ、落としちゃだめ)
黒いリボンのストラップがついたヒールの付きの靴が、磨き上げられた廊下をコツコツと叩く。
その歩みは少しゆっくりだ。
慎重にと自分自身に言い聞かせながら、これ以上ないというほどに全神経を集中させて、ラゼットはひとまず大広間までワゴンを押しきった。
この大ホールを抜けて、ベルベットの絨毯が敷かれた回廊を右に曲がったところが水晶の間だ。
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