冬の流行

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「というか見舞いって言ってもちゃんとラファエルに許可とってんの?」 「…いやぁ…使い魔として主を心配するのは当然ですよ」 「許可、とってないんだな…」 見るからに怯えて周りを気にし始めるセラフィム。カチカチと奥歯を鳴らす彼に向けて、拓也は呆れたようにそう発言し、二人分のティーカップと茶葉を用意し始めた。 その間もセラフィムは頻りに辺りを警戒し、ラファエルの接近を探知している。が、まだその痕跡は無いようで、しばらくすると落ち着きを取り戻す。 「それで最近天界はどうよ?」 「ん、あぁ…まぁ特に変わったことはないな」 「そっかー」 手早く準備した紅茶を差し出しながらそう返し、自分はセラフィムの向かいのソファーに腰かける。 「お前の方こそどうなのよ」 「これといって気になることはないけど…まぁ強いて言うと、最近偵察の頻度が高いってことが気になる。ついさっきも来たからな」 先程、瞬殺した偵察の天使のことを思いだしながら拓也はそう語る。 ミシェルの体調が優れないからいち早く彼女の下へ戻るため、今回は情報を聞き出そうとはせず斬り捨てた。 ー…それに…どうせ拷問掛ける前に自殺しやがるからなぁ…ー 拓也は、偵察のそんな無駄な忠誠心に心底苛立ちながら舌打ちすると、気持ちの乱れを紛らわすように紅茶を呷る。 「なるほどね…それは近々なんかあるかもなぁ」 「あぁ、俺もそう思って一応警戒してんだけどな…まだ何も起こらない。 まぁ考えすぎるのも良くない。今出来る最善を尽くしたら、後はその”ナニカ”が起こったら全力で事に当たる。それでいいんだよ~」 「ハハ、まぁそうだなー」 ヘラヘラしながらそんなことを言う拓也に、セラフィムも笑いながら適当に返した。
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