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林の中を歩く…一人の少女の影があった。
「この林に入るのもなつかしいですね…」
肩で切り揃えられた絹糸のように美しい銀髪に、少し幼くも思えるクールで非常に整った顔立ち。そしてクリっとしていて大きい瞳は…サファイアのように澄んだ蒼色。
この少女の容貌は…間違いなく美少女と呼ばれるそれだった。
「確か、薬草を二十本ほど持って帰ればよかったんですよね。」
彼女は今、所属するギルドクエストでこの林を訪れていた。
危険度など諸々の基準によってランク分けが行われるギルドのクエスト。
現在彼女が受けているのはBランクの採取クエストで、この林にしか自生しない薬草を二十本ほど採取して帰るというものであった、
本来、採取するだけならEランク、高くてもDランクに属するクエストなのだが、どうやら最近この林に山賊が現れ、戦闘行為に発展する可能性があるということでBランクになっている。
「こんなに素晴らしい場所を根城にするなんて、許せません。」
一人でにそうぼやく彼女の、月のような冷たい印象を与えながらも端正であるその顔には…静かに怒りの感情が宿っていた。
「あわよくば山賊を追い出してしまいましょう。」
物騒なことを呟いてひた歩む彼女は、しきりに辺りを見回して目的のモノを探す。
そしてそれらしきものが群生している地帯を発見した。
「…うん。間違いない、これですね。」
歩み寄ってそれが依頼の品で間違いない事を確認すると、軽く屈んで持ってきていたバスケットの中に摘み入れる。
薬草独特の清涼感のある匂いが鼻を抜け…目を細める彼女はあっという間に目的の本数を積み切った。
その場で立ち上がり背伸びをすると…木漏れ日や、耳を澄ませば聞こえる鳥の囀りに…山賊がいるといことで張り詰めていた緊張も若干和らいでしまった。
「う~ん。やっぱりいい所ですね…ここ。」
つい長居したくなってしまう程にリラックスできる場所だが…彼女は仕事で来ている身。わざわざギルドに依頼を出しているのだから早く納品をしなければと思考を切り替えた彼女は短く深呼吸をすると……少しだけ不満げに呟いた。
「……結局、山賊は現れませんでしたね。」
そして彼女が踵を返し…帰路に就こうとしたその時。
近くの背の高い草が集まった茂みが激しく揺れた。
「(山賊ッ!?)」
瞬時に魔力を練り上げて全身に巡らせた彼女は、おおよそその可憐な見た目からは想像もできないほど機敏な動きで件の茂みから距離を取り、右の掌をそちらへ突き出していつでも攻撃が出来る態勢を整えた。
だが、彼女の予想に反して茂みから飛び出してきたのは……
股間に葉っぱ一枚をつけた…ほぼ全裸の男だった。
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