はじまる前

12/18
前へ
/22ページ
次へ
次の日の体育は出た。 体育館で跳び箱の上をでんぐり返しするものだった。 何列かに別れ、淡々と自由に飛んで行った。 私も淡々とこなしていた。 が、順番が回ってきて、同じようにでんぐり返ししようとしたら、いきなり落ちてしまった。 背中から、大きな音を立てて落ちたもんだから、皆が一斉に駆け寄る。 「大丈夫!?」 「大丈夫!?芹沢さん!?」 「みお!?」 私自身、落ちたのが衝撃的すぎて呆けてしまっていた。 その騒ぎにベテラン体育教師が駆け寄り、立てるのを確認したら 「もう一回してみろ」 と、すぐさま先生の補助付きでやるように言われた。 仕方ないので、淡々とやってのけると 「出来るじゃないか」 そう言ってまた各自するようにと去って行った。 ハイ。出来るんです。 ただ…あの時、左手がカクンと力が消えたみたいで…気付いたら落ちていた。 力が突然…入らなくなったみたい… ワキワキと左手を動かしてみるけど異常は分からない。 (骨は折れてない。) じゃあ、いったい何だったんだろう、、 ー放課後… 演劇の舞台練習中、全身が痛ダルくなってきた… 舞台袖のカーテン裏に隠れて座り込む… (最悪だ…) 顧問は私の痛い訴えを聞いちゃくれない… 何だか悲しくなってきた、、 一人隠れて涙に耐えていたら、誰かがカーテンを開ける音。 「見つけたっ…。」 振り返ると何故か直也くん。 何でこんなとこに…? (てか!涙!) 我慢出来ずに号泣してた私は、慌てて涙を隠した。 泣いてる所なんて見られたくない! すると、シャーッ!っと勢いよくカーテンを閉め直す直也くん。 直也くんはカーテンの中に入ったままで。 (えっ?えっ?) 私と同じ目線に座り、優しく頭を撫でてきた。 「大丈夫?痛い?」 優しく優しく語りかけ、優しい視線で、優しい雰囲気で、優しく心配してくれる。。 私は… ぐしゃぐしゃに泣いた顔を、タオルで隠す事しか出来なかった。。 その日のお風呂中、 プチぎっくり腰になった。 しばらくの間、体育を休んだのは言うまでもない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加