はじまる前

3/18
前へ
/22ページ
次へ
あれは高校の入学式、雨で、 体育館に向かう時、上履きの無い私は靴下がびしょ濡れになった。 『ほら、あの子…』 『あー、間に合わなかったのねー』 誰かのひそひそ話。 耳に届いても気にもせず、式が終わり教室へ向かった。 数少ない同じ中学だった子たちは皆違うクラス。 私一人。 知らない人たちの顔がよく見えない。 雨で教室が暗いせいかな。 全員が席へ座る中で、慌てて母が上履きを私へ渡す。 手渡された私は少しだけ迷った。 濡れた靴下で足で、どうやって履こうか、、 (だから高校なんて行きたくなかった) 重たい想いがよぎる… 私は靴下を脱ぎ裸足になった。 恥ずかしいなんて微塵も思わない。 それは、諦めにも似た感情。 ここで楽しく過ごす気なんてさらさらなかった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加