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あれは高校の入学式、雨で、
体育館に向かう時、上履きの無い私は靴下がびしょ濡れになった。
『ほら、あの子…』
『あー、間に合わなかったのねー』
誰かのひそひそ話。
耳に届いても気にもせず、式が終わり教室へ向かった。
数少ない同じ中学だった子たちは皆違うクラス。
私一人。
知らない人たちの顔がよく見えない。
雨で教室が暗いせいかな。
全員が席へ座る中で、慌てて母が上履きを私へ渡す。
手渡された私は少しだけ迷った。
濡れた靴下で足で、どうやって履こうか、、
(だから高校なんて行きたくなかった)
重たい想いがよぎる…
私は靴下を脱ぎ裸足になった。
恥ずかしいなんて微塵も思わない。
それは、諦めにも似た感情。
ここで楽しく過ごす気なんてさらさらなかった。
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