6.転生

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「そんなこと、答えるまでもないだろう。山があるから登る。それと同じだ。オレ様はトレジャーハンターだ。珍しい宝があるなら、是非とも拝みたい。欲しい。それが、オレ様の生き甲斐だ」  トコリコは色上に向かって走り出した。その顔に恐怖などない。この状況を楽しむ若者の顔があった。 「何故だ!何故、私の憎しみが理解できない!」  色上は両手を広げ、自分に真っ直ぐ向かってくるトコリコに対し不規則に曲がる薄緑の線を何本も引いた。描かれた線は具現化しトコリコを斬りつける。 「風神の鎌(ライトグリーンカッター)」  トコリコの周囲に発生したのは薄緑色の鎌鼬(かまいたち)。制限なしに何十、何百と引かれた線が本物の鎌鼬となってトコリコを襲った。服が裂かれ、肌も切られたが、トコリコは笑っていた。右手を握り締め腕輪の効果で力を増幅させる。 「オレ様がお前の恨みなど知るか!」  踏み込み力が増幅された右手を後ろに引く。右手は黄金に輝き、拳が色上の身体に命中する。  しかし、音はしなかった。色上の身体に拳が当たったはずなのに。何の音もしない。トコリコも殴った感触は感じられなかった。まるで空をきったかのようだ。  トコリコは極武装の中でも、禁忌である『転生』の力を甘く見ていた。雷壱のように姿は変わっても、中身は人間のままであると思っていた。 「黒穴(ブラックアウト)」  色上の身体に例の黒い穴が空いていた。トコリコの拳が命中する寸前に、身体に黒い絵の具を塗り、身体を貫く黒穴をつくった。 「『色』を奪うことばかりが、私の力だと思っているようだな」  色上は自分の身体を貫通するトコリコの腕を掴む。 「上塗り(カラーリング)」 「な!てめェ!」  色上に触れられた箇所から別の色が塗られていく。トコリコはとっさに、ガトリングガンを撃ち込むも、彼には通じない。全て自分の色として吸収してしまう。  仕方なく、色上の太ももに蹴りを入れトコリコは何とか右腕を何とか、彼の身体から抜き取る。だが、すでに右手は黒い色で塗りつぶされていた。いくら、腕輪を発動させようとしても、反応はまるでない。 「無駄だ。貴様の腕輪は塗り替えさせてもらった。私を倒さない限り、その色は落ちない」  さすがは、『色』の力だ。奪ったり、描くだけではない。他のモノの力、そのモノを変えてしまう効果もあった。
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