21人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ、真央…」
落ち着きを取り戻したのか、拓実の声は冷静だった。
「何?」
「さっき、言いかけたこと、あの先は、何て言おうとしたんだ?」
「どういうこと?」
「あの男の子は若いんだから、きっと彼を癒してくれる人が出てくる。じゃなきゃ、って。その先…」
私は、唇をかみ俯いた。そして、
「ごめん、覚えてない」
そう答えた。
「そっか」
拓実はこれ以上追求しなかった。のろのろと立ち上がると寝室へ入って行った。
残された私は、シンクにもたれながら上を向いた。溢れそうになる涙を必死に戻そうと努力した。そうしながら、先ほどの自分の声を頭の中で反響させた。
最初のコメントを投稿しよう!