第三章・張り詰めた糸

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「なぁ、真央…」 落ち着きを取り戻したのか、拓実の声は冷静だった。 「何?」 「さっき、言いかけたこと、あの先は、何て言おうとしたんだ?」 「どういうこと?」 「あの男の子は若いんだから、きっと彼を癒してくれる人が出てくる。じゃなきゃ、って。その先…」 私は、唇をかみ俯いた。そして、 「ごめん、覚えてない」 そう答えた。 「そっか」 拓実はこれ以上追求しなかった。のろのろと立ち上がると寝室へ入って行った。 残された私は、シンクにもたれながら上を向いた。溢れそうになる涙を必死に戻そうと努力した。そうしながら、先ほどの自分の声を頭の中で反響させた。
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