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(彼は、きっとまた恋をすると思う。だって、彼はまだ若いんだし、これからの人生まだまだ長いんだもの。そのうち、きっと、彼の心の傷を癒してくれる人が現われて恋に落ちるはず、じゃなきゃ…じゃなきゃ、一生幸せにはなれない。その男の子も、私も…)
そう言い掛けたことを思い出す。
私こそ、見ず知らずの少年と拓実を重ね合せているのだった。
記憶を撒き戻し、目を開けた。
あの、閉ざされた寝室のドアの向こうに愛する人がいる。
こんなに近くにいるのに、でも遠い。
私は彼を愛している。死んだ恋人を思い続けている男を、強く欲している。
それは確かだ。
そして、拓実の心が私に寄り添う事など一生ない。
それも確かだった。
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