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「あの、ここじゃないんだ」
躊躇いがちに言うと、
「は?どっか、行きたいとこあった?」
と、悠馬。
「ううん。そうじゃなくて、私ね、今実家に暮らしているの」
「それって…」
悠馬の瞳に期待の色が浮かんだので、私は慌てて訂正した。
「違うの、ちょっと喧嘩しちゃって。別に別れたわけじゃないの。ほら、冷却期間っていうか、お互い頭を冷やそうって。そういうこと、あるでしょう?」
そこまで言うと、悠馬は苦笑いした。
「そんな必死にならなくてもいいじゃん。わかった、じゃあ、実家な」
私は恥ずかしくなって俯いた。
悠馬の言う通り、何をこれほど必死になっているのだろう。
ちらりと悠馬のほうを見ると、優しい笑みが帰って来た。
その日、悠馬は私に何があったのか聞かなかった。
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