そしてこれが現実である。

4/7
前へ
/36ページ
次へ
 そんな未来に思いを馳せながら一息ついて振り返ると、般若の形相をした菜々子が俺にグーパンチを伸ばしているのが見え……。 「アブラハムにゃ!?」 「七人の子! 私の芋に何してくれてんだワレェ!?」  胸ぐらを捕まれて床から引き起こされる俺の目に、無傷で菜々子の横に立つ先ほどの幼女が映った。恐らく、菜々子がしっかりキャッチしたのだろう。 「……無事で何より」 「……おにいちゃん、なんてなまえ?」  唐突な幼女の台詞に、俺は少々迷って口を開いた。 「騎竜(きりゅう)……まっ、真姫名(まきな)だ」 「きりゅー、まきな……たすけてくれて、ありがとう!」 「……どういたしましてぶっ!?」 「んなことより芋だ! パーティーサイズで弁償しろやゴラァ……!?」  そうして向かってきた再びのグーパンチを最後に、俺の視界は真っ暗になった。 暗闇の中ではにかむ幼女の笑顔だけが、あの日のようにやけに眩しかった……。 カムバック、あの日……。 ――――――――――――――― 「ぶっはっはっはっ! 聞いたぜマッキー、昨日の事ォ!? 本当にウケるよなお前ェ!」 「朝からうるせぇよ、大地(だいち)……こちとら何にも面白くないわ」  そんな出来事から早半日、明くる朝の登校時間。 俺は隣に並ぶ幼馴染み二号、親友にして悪友の五宝院(ごほういん) 大地を睨む。 俺より頭一つ高い身長はおおよそ2メートル、しかしその割にはひょろっひょろの細身で頼りない。 クセッ毛のボサボサ頭に、弄ってくれと言わんばかりの分厚い眼鏡。 「せっかく強盗退治したのにィー? 蒔野に殴られて気絶したせいで犯人と間違われて連れて行かれー!?」 「だからウルセェよ」 「助けた幼女に助けられて無事に釈放されー!? おまけに蒔野に手柄を全部奪われるとかどんだけだよお前ェ!」 「ウルセェって言ってるだろ! バスの中だぞ今ァ!?」 「お客様ー、お静かにお願いしまーす」 「……すいません」 「そうだぞー? 静かにしろよマッキー」 「誰のせいか、誰の……!?」  明るく煩く、とってもウザい。賛否両論の彼の渾名は“ゴボウ院”。 「しかし……良いよな、マッキー」 「何がだ?」 「いや、幼女に好かれて。羨ましい」 「ガチトーンで言うなよ」  おまけにロリコンの変態さん。 どうしてこんなのが親友なのか、ほとほと疑問である。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加