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そんな未来に思いを馳せながら一息ついて振り返ると、般若の形相をした菜々子が俺にグーパンチを伸ばしているのが見え……。
「アブラハムにゃ!?」
「七人の子! 私の芋に何してくれてんだワレェ!?」
胸ぐらを捕まれて床から引き起こされる俺の目に、無傷で菜々子の横に立つ先ほどの幼女が映った。恐らく、菜々子がしっかりキャッチしたのだろう。
「……無事で何より」
「……おにいちゃん、なんてなまえ?」
唐突な幼女の台詞に、俺は少々迷って口を開いた。
「騎竜(きりゅう)……まっ、真姫名(まきな)だ」
「きりゅー、まきな……たすけてくれて、ありがとう!」
「……どういたしましてぶっ!?」
「んなことより芋だ! パーティーサイズで弁償しろやゴラァ……!?」
そうして向かってきた再びのグーパンチを最後に、俺の視界は真っ暗になった。
暗闇の中ではにかむ幼女の笑顔だけが、あの日のようにやけに眩しかった……。
カムバック、あの日……。
―――――――――――――――
「ぶっはっはっはっ! 聞いたぜマッキー、昨日の事ォ!? 本当にウケるよなお前ェ!」
「朝からうるせぇよ、大地(だいち)……こちとら何にも面白くないわ」
そんな出来事から早半日、明くる朝の登校時間。
俺は隣に並ぶ幼馴染み二号、親友にして悪友の五宝院(ごほういん) 大地を睨む。
俺より頭一つ高い身長はおおよそ2メートル、しかしその割にはひょろっひょろの細身で頼りない。
クセッ毛のボサボサ頭に、弄ってくれと言わんばかりの分厚い眼鏡。
「せっかく強盗退治したのにィー? 蒔野に殴られて気絶したせいで犯人と間違われて連れて行かれー!?」
「だからウルセェよ」
「助けた幼女に助けられて無事に釈放されー!? おまけに蒔野に手柄を全部奪われるとかどんだけだよお前ェ!」
「ウルセェって言ってるだろ! バスの中だぞ今ァ!?」
「お客様ー、お静かにお願いしまーす」
「……すいません」
「そうだぞー? 静かにしろよマッキー」
「誰のせいか、誰の……!?」
明るく煩く、とってもウザい。賛否両論の彼の渾名は“ゴボウ院”。
「しかし……良いよな、マッキー」
「何がだ?」
「いや、幼女に好かれて。羨ましい」
「ガチトーンで言うなよ」
おまけにロリコンの変態さん。
どうしてこんなのが親友なのか、ほとほと疑問である。
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