そしてこれが現実である。

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 くだらぬお喋りに興じていれば早いもので、バスはあっという間に目的地へと辿り着いた。 俺や大地、菜々子も通う我等が学舎“龍門学園(たつかどがくえん)”。通称“リュウモン”。 広大な敷地を惜しむことなく使ったこの学園は、巷じゃ有名なマンモス校である。 小、中、高、更には大学まで纏めたエスカレーター式の学園で、その教育レベルも日本屈指。 著名人の卒業生なんかは数知れず、今の総理大臣なんかもこの学園出身だ。 「あっ! 騎竜先輩だ!」 「おはよーございます!」 「新聞見ましたよー!?」  バスを降りた瞬間に鉢合わせたのは中等部一年の女の子三人組。 訳あって彼女達には妙に懐かれ、顔を合わせる度に寄ってくる。 嫌な訳じゃない、正直言って嬉しい限りだ。三者三様、皆可愛いのだから。 しかし、だからこそ間違いが有りそうで怖い。理性よ、頑張れ。俺には好きな女の子がいるのだ。 「あぁ、おはよう。てか、新聞の件は触れないでくれ……思い出すと鼻が痛む」 「いやいや、私達ちゃんと知ってますから!」 「“また”騎竜先輩が助けたんでしょー?」 「私達の時みたいに!」 「いやー、思いの外両替に手間取ったぜ!」 「「「きゃああああああ!!? 変態の人だぁあああああ!!!」」」  そんな彼女達は、遅れてバスから飛び出してきた大地を見るなり一目散に逃げていった。 無理もないが、流石に大地が不憫になる……。 「……まぁ、ドンマイ」 「え?」 「いや、気付いてないなら良いよ」 「おはよう、騎竜くん」  不意に聞こえた綺麗な声に振り返ると、そこには烏の様に黒い長髪を後ろで束ねた美少女が立っていた。 高等部を表す白い制服、そこから伸びるしなやかな美脚、お洒落なリムレスフレームの眼鏡が知的な雰囲気を醸し出している。美術品のような両手は鞄を支えながら、お腹の辺りで行儀良く組まれている。 彼女こそ幼馴染み第三号………………。 「いや、誰だよ暫定第三号。俺に幼馴染みは三人もいないぞ?」 「誰が暫定第三号よ……はぁ、幼馴染みの顔を忘れるなんて、ちょっと酷いんじゃないかしら?」 「いや、だから誰だよ」 「いや、マッキー、蒔野だろ? おっはー、蒔野」 「……あぁ、居たのねゴボウ院さん、おはようございます」  あぁ、菜々子ね。はいはい、俺の幼馴染み第一号………………え?
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