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「リサ、ごめん。外で待っててくれる?」
「……唯。無理しないでね」
リサが部屋を出ていく。
ーーギュッと、
ポケットの携帯を握りしめたまま、深呼吸した。
冬木先生を想いながら。
「……唯、ごめんな」
そっと近付いて、
抱きしめながら言う先輩の震えた声が響く。
「……離して、下さい」
「……俺、今でも好きだから。もう、離したり…しないから、やり直そう」
離してくれなくて、
腕に力が込められていく。
「……勝手、ですね?……不安だったのに、苦しかったのに。今更…ですよ。……ズルイですよ、もう、忘れたいのに。……やっと、やっと、進めたのに…」
「償わして、欲しいんだ……もう離さないから…」
先輩の胸を精一杯押して離れたのに。
「俺、家出たんだ。……だからって訳じゃ無いけど、チャンスくれないかな?」
腕を掴まれて、
崩れ込む先輩の声がまた、聞きたくないのに響いてくる。
振り払いたいのに、力が抜けたみたいに……動けない。
ねえ、冬木先生?
どうして、こうなるんだろう。
先生を想ったら、いけないのかな?
ダメなのかな?
そういうことなのかな?
頑張っても、消せないから。
先生を想う資格なんか、ヤッパリ無いのかな?
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