第1章

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 阪急電車に乗り込むと先ほどまでとは異なり少し暑く感じた。  平日の昼間はこうして座って読書に打ち込めるが、帰りの電車では早くからホームにいるかよほど運が良くない限りは座ることすらままならない。  電車に揺られながら、学生時代も就職活動の時にはよく阪急電車を利用したと思うと、今こうして阪急電車に乗っていることをしみじみ思う。  なにも入っていない鞄の中から小説を広げる。鞄に物を入れて持ち歩くのはあまり好きではない ので、鞄の中身はいつも小説が二冊ほど入っているだけである。  しかし整理されている訳でもなく、逆に苦手だから荷物が少ないだけだ。  教科書も持ち帰ることなどはほとんどしていなかった。  小説は本屋で目に入ったものを適当に買い読むことが好きだが、仕事が忙しくなるとその事すらままならない。  ペラペラとページをめくっていると、ほどよい揺れと社内の暖かさに段々と心地よい眠気に襲われ、どうせ着くのは終点の梅田だしと思い意識を委ねた。  
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