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意を固め、身を奮い立たせると、私は真っ直ぐに悠馬をにらみつけた。
「もし悠馬が私を忘れないというなら、私は悠馬の前から消えるしかない」
悠馬の顔からみるみるうちに感情が消えていく。涙で滲んだ彼の大きな瞳が、ゆっくりと灰色がかった絶望に支配されていくのを私は目をそらすことなく見届けた。
こうするしか、なかった。
やがて悠馬は、私の体から手を離し、ハンドルに額を押し付けるような格好のまま動かなくなってしまった。そして、
「ごめん、今日は送れない。一人にして欲しい」
ぽつりと呟いた。
私は彼の車から降りると、ちょうどやってきた空車のタクシーに手を上げ乗り込んだ。
タクシーの中で、悠馬の肩が大きく上下しているのを私は悲痛な思いで見届けた。
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