第4章・奇跡の起こる夜

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店を出ると、拓実は私の作ったマフラーを巻いてくれた。ごめんと言われた時は泣けなかったのに、その途端、涙が溢れた。 このマフラーは二度と使われることがないだろう。もしかしたら、明日には捨てられるかもしれない。 でも、拓実は今こうして目の前で撒いてくれた。一編み一編みにありったけの愛を込めた不恰好なマフラーに顔を埋めてくれている。暖かいと呟く。 良かった。最後に、私の愛を伝えることができて良かった。触れてもらうことができて良かった。 もう、充分だった。
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