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真衣の眠るお墓の前で、真央と拓実は手を合わせる。
真央が顔をあげても、なお、拓実はじっと動かない。
真央は、そんな拓実の側をそっと離れ、空を見上げた。
カンボジアのそれよりも、ずっと薄い青空の下、真央は頬をなでる風に目を細める。
空には、うっすらと伸びた白い雲。
あの雲を渡れば、真衣に会えるのだろうか。
真央は天を仰ぎ、そんなことを考えた。
その刹那、一際強い風が吹き、葉桜が舞い踊った。
真央、おめでとう。
葉の擦れる音に混じって、そう囁く真衣の声が、真央の耳には確かに聞こえた。
「真衣、ありがとう」
誰ともなく真央は呟くと、くるりと踵を返す。そして、愛おしい人の元へ駆け出した。
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