エピローグ

2/2
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
真衣の眠るお墓の前で、真央と拓実は手を合わせる。 真央が顔をあげても、なお、拓実はじっと動かない。 真央は、そんな拓実の側をそっと離れ、空を見上げた。 カンボジアのそれよりも、ずっと薄い青空の下、真央は頬をなでる風に目を細める。 空には、うっすらと伸びた白い雲。 あの雲を渡れば、真衣に会えるのだろうか。 真央は天を仰ぎ、そんなことを考えた。 その刹那、一際強い風が吹き、葉桜が舞い踊った。 真央、おめでとう。 葉の擦れる音に混じって、そう囁く真衣の声が、真央の耳には確かに聞こえた。 「真衣、ありがとう」 誰ともなく真央は呟くと、くるりと踵を返す。そして、愛おしい人の元へ駆け出した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!