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やはり長谷部は何も言わず俺を見下ろす。いや、俺は見てないけど痛いほどの強い視線が俺を突き刺してる。
いたい…心も体も痛いよ…。
チョコ探ししててウキウキだった気分は一気に急下降。お互い無言のまま重い空気。
うん、耐えられない。
緊張して乾いた喉に唾を飲み込んで口を開いた。
「えっと…おはよう、長谷部!これ新 商品チョコらしいな!面白いから気に なっちゃった。これあと1個しかない なぁ…長谷部に譲るよ!」
口早に話して、ニッと精一杯の明るい作笑いではい! と渡して俺は誤魔化しにポテトチップ スを取ってレジへ行こうとしたら手を掴まれた。
ドキッと心臓が凍った。ときめく感じじゃないけど。
………と不意に長谷部から甘い香りがした……。
「…宮下…」
その低い声にその思いはすぐに消え去った。
「は、はい?」
「これは宮下が買えばいい。目をキラキラさせて欲しそうに見てたのが気に なっただけだから」
「……え?」
……笑った。メガネの奥の切れ長の瞳 が優しく細められて、柔らかく口元が上がった。
冷たい会長ってこんな人だったの…?噂と違って。
優しい笑顔にただ、驚いた…。
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