チョコが好きです。

5/11
前へ
/11ページ
次へ
やはり長谷部は何も言わず俺を見下ろす。いや、俺は見てないけど痛いほどの強い視線が俺を突き刺してる。 いたい…心も体も痛いよ…。 チョコ探ししててウキウキだった気分は一気に急下降。お互い無言のまま重い空気。 うん、耐えられない。 緊張して乾いた喉に唾を飲み込んで口を開いた。 「えっと…おはよう、長谷部!これ新 商品チョコらしいな!面白いから気に なっちゃった。これあと1個しかない なぁ…長谷部に譲るよ!」 口早に話して、ニッと精一杯の明るい作笑いではい! と渡して俺は誤魔化しにポテトチップ スを取ってレジへ行こうとしたら手を掴まれた。 ドキッと心臓が凍った。ときめく感じじゃないけど。 ………と不意に長谷部から甘い香りがした……。 「…宮下…」 その低い声にその思いはすぐに消え去った。 「は、はい?」 「これは宮下が買えばいい。目をキラキラさせて欲しそうに見てたのが気に なっただけだから」 「……え?」 ……笑った。メガネの奥の切れ長の瞳 が優しく細められて、柔らかく口元が上がった。 冷たい会長ってこんな人だったの…?噂と違って。 優しい笑顔にただ、驚いた…。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加