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次の日、クロノの朝は早かった。
「どうしたんですか? クロノさん。
こんな早起きしてるとこ、初めて見ましたよ?」
「うっせーよ、受付嬢」
クロノは朝食のパンをかじりながら、掲示板の依頼を物色していた。
「それはいいですけどクロノさん、パンを食べ歩きしないでください」
「歩いてねーよ」
ガキの屁理屈みたいなことを言うクロノに、フューラムは頭を抱えた。
「あのですね、朝食はちゃんと食堂か自室で済ませてから……」
「はい、これ受けるぞ、受付嬢」
クロノは受付嬢の言葉を遮って、掲示板から剥がした依頼書を突き出した。
「…………分かりました。
依頼書を持って、指定の通りに依頼人と合流してください」
一気にパンを詰め込み、朝食を終えたクロノは外套に降りかかったパン粉をはたき落とす。
「じゃ、いってくる」
「あ、クロノさん。ちゃんと依頼書読みました? 指定の時刻は午後ですよ」
「行きたい店があるんだよ」
「あ、そうですか。お気をつけて」
受付嬢は首を傾げていたが、構わずクロノはギルドを出ていった。
「昨日から変ですねー、クロノさん」
「思春期なんだろう」
「あ、親方おはようございます」
また突然現れたイードンだが、フューラムは普通に対応している。
「おはようフューラム。クロノは護衛の依頼受けてくれたか?」
「はい。普通に商人の護衛依頼を受けましたよ。
素直過ぎて怪しいのですが……」
「うん、うん。若いって素晴らしい」
イードンは嬉しそうに頷いた。
どうやらクロノに春が訪れたと思い込んでいるらしい。
……その相手が、国から討伐依頼の出ている悪魔とは露知らず。
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