訳あり悪魔と護衛依頼

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――――コンコン。 玄関の戸を叩く音に、『ドアをノックする戦士なんて珍しいな』と思いながら、レイアは昼食を作る手を止めた。 「はーい、どちら様ですかー?」 「悪魔の討伐に来たクロノだー」 「え? クロノ!?」 レイアはドタバタと音を立てながら玄関に向かって駆け、ドアを勢いよく開け放つ。 「おはようクロノ! 小麦粉は!?」 クロノは呆れた顔をして立っていた。 「だーかーらー、悪魔の討伐に来たっつってるだろ」 「知らないもん! 悪魔じゃないから知らないもん!」 「おし、有無を言わさず」 「きゃあ!」 クロノはまた模造の剣を抜き、そのまま振り下ろすとレイアはサッと後ろへ避けた。 「せめて私がお昼を作り終えるの待ってよー!」 「悪魔さまの事情なんざ知ることかよ」 「とりあえず家を壊したくないから外に出させろ!」 「おわっ!」 レイアお得意の火の玉が、クロノの顔面をめがけて飛んでいく。 クロノが避けると火の玉は落ちる前に消えた。 この間は消えずに落ちて地面を抉っていたが―― 「自ら放火とか笑えないから気をつけなきゃねー」 クロノは苦笑いした。 討伐に来る戦士に家を壊されても不思議じゃないのだが、なるほど、コイツはちゃんと家を大切にしてるらしい。 「命の心配より家の心配とは余裕じゃねーか、悪魔さま」 するとドンッとクロノの体は衝撃を受け、高床の玄関から庭へ落ちた。 地面に勢いよくぶつけた腰をさすりながら、立ち上がる。 「……空気砲か? 詠唱無いから分かりにくいな」 「そう、ずっと不思議だったんだけどさ。 なんで戦士って皆、魔法に名前つけて呼んでるの? 」
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