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「ったくあいつ、今日もスタ練サボりかよ。」
携帯を見ながらそう言ってため息をつく。
「あいつって、達也?」
「そ、先週も来てねえし。」
達也は雄大のバンドのベース。
「新しい人探した方がいいんじゃない?ライブあるんだし。」
「だよな…でもなあ…。」
雄大のその表情が何を意味するのか、あたしはよくわかった。
結局その日のスタジオ練習は達也のベース抜きで、あたしはいつも通りその音をただただ聴いていた。
あたしが雄大に出会ったのは今年の夏。それからまだ半年も経っていない。
たまに買い物に来るくらいのこの街で、たまたまその日買い物に来たあたしは、大きな黒いケースを背負った彼に出会った。
出会ったと言っても、彼はその次の週末に行われるライブのビラを配っていて、あたしはそれを受け取っただけ。
バンドなんて全く興味もなくて、音楽のことなんて全くわからなかった。
ただなんとなく、同じことを繰り返す毎日に飽きていて、だからあたしはライブハウスに足を運んだ。
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