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「純華学園」-。幼稚舎から高等部まであり、国内で有名な一番校。
十時絽稀和はその高等部1年生に所属している。
そんな彼は、異性からも同性からも、老若男女問わず好かれる少年だ。
優しく、友達思いで、正義感も強い。笑顔を絶やさない。というのがアイドル的存在の人気の理由だそうだ。
だが、そんな彼には、ある忘れられない悲しい過去があった。
5歳の頃、幼なじみの女の子、リンとボールで遊んでいたところ、絽稀和が蹴ったボールが車道へ転がっていってしまい、リンはボールを拾いに車道へ走って行ってしまった。絽稀和はその時、目の前をひらひらと飛んでいる蝶々に気をとられて夢中になっていた。
-その時だ 遠くの方・・・車道から劈く音がした。
その音ではっとした絽稀和は目が覚めたかのようにあたりを見渡した。
自分一人と、何も知らずに自由気ままに軽やかに宙を舞う黄色い蝶々がいるだけだった。 リンがいないのだ。絽稀和は真っ先に音がした車道へ走った。
現場はひどく惨状だった。黒い軽自動車はフロントガラスが粉々になり、車の先端はへこみ、タイヤは形が崩れ、車体からは煙が燻ぶっている。車の中には運転席に男性が一人、ハンドルにうつ伏せになってぐったりしている。
「絽稀和・・・」
蚊の鳴くような声が足元からして、絽稀和は はっとした。
「リン!大丈夫か!?待ってろ、今 助けてやるから・・・!!」
絽稀和はリンの身体に手を回そうとすると、「絽稀和、足が、動かないの-。」
「・・・えっ・・・」
絽稀和は自分の耳を疑った。だがすぐに今のこの状況に気持ちを切り替えた。
「僕は、リンを助ける。」
リンが少し驚いた顔をすると、車内の男性が突然「誰か・・・誰か助けてくれえっ!!」と叫んだ。気を取り戻したのだ。
びくっとした絽稀和は、すぐに車内を覗き込もうと運転席に駆け寄ろうとすると、突然の爆発と共に燃え上がった真っ赤な炎は車全体を包み込んだ。
爆風を受けた絽稀和は反対車線へ吹き飛ばされ、走ってきた車に危うく轢かれそうになった。
「なんだなんださっきから。テレビも碌に観れないじゃないか。これで2回目だぞ。一体何が…」
近くの家からぺったらぺったらとスリッパみたいな靴を素足で履き、よれよれの服を着た男性が、髪を掻き毟りながら放ったその言葉は、しゃぼん玉のように宙に浮かび、瞬時に消えた。
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