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その男性はすぐさま炎が轟々と燃え上がっている車に、今にも転びそうな走り方で駆け寄った。
「こ、これは、い、いっ一体何が・・・!!」
いきなりこんな惨状を目の前にし、どうすることもできない、ただあたふたしている男性に絽稀和が叫んだ。
「おじさん!この車の中に・・・運転席に男の人が一人いるんだ!」
その声に反応した男性は、はっと車を見た。
「爆発して火が出るまでは声がしたんだけど、もう、今は・・・!!」
絽稀和のその言葉の続きをすぐに悟った男性は、「待ってろ、今ホース持ってくらあっ!!」と叫びながら、よたよたした足取りで家へ疾走した。
絽稀和はそれを確認し、リンを見た。
「・・・足が動かないとしても、僕はリンを・・・助けるよ」
絽稀和の真剣な眼差しを初めて見たリンは、不思議そうな顔をして言った。
「どうして・・・?」
絽稀和はそれを聞いてなぜか、今しかない、そう思った。
「・・・っだって、僕、リンのこと・・・ずっと・・・ずっと前から」そこまで言ったその時、リンは何かを察知して、しゃがんでいた絽稀和を、渾身の力で突き飛ばした。絽稀和は後ろへ尻餅をついて倒れ込んだ。
-まさにその時だ 車体を包んでいた真っ赤な炎は突然の爆発と共に、さらに激しく、どす黒く燃え上がった。
・・・・・・絽稀和は声が出なくなった。
-リンが、燃えている-。
「おーいっホース持って来たぞーっ!!」
よろよろしながら、100mはあるであろう緑色の太いホースを引きずりながら絽稀和に呼びかけた。 返事がない。
「くっそ、炎がさっきよりひどくなってらあ!!お陰でさっきの少年が見えねえ!一緒に燃えちまったのかっ!?とっとにかく今は消火だ、誰か、誰かいねえかあっ」とあたりを見渡しながら叫ぶと、「消防車と救急車なら呼びましたよ。」と言う声が聞こえた。
男性は声がした方向をはっとして見ると、年配の女性が立っていた。
「ほ、本当かっ!?」
「ええ。」
「すまんなばあさん!この近くには年寄りしかいねえから、耳が遠くてこの事態には気付かねえんだろうけど、あんただけでもいてくれてよかった!!」
「いえいえ、わたしゃお散歩に行こうと思ってねえ」
その言葉は男性の耳には入っていないようだった。
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