急速に深まる仲

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「んじゃ、昼食を食べるためにも、パパーッと終わらせようぜっ」と、矢口はコース係が考えを練っている隣の部屋へと歩き出し、そこに前田がついて行った。  山岡は「お、おうっ」と2人に小走りでついて行った。  ・・・ウソなのだ。自分は腹が減ってぼーっとしていたわけではない。  川野だ。川野が絽稀和と一緒に行動している。愛優も一緒にいるが、彼女は川野の気持ちを知らない。だから山岡にとっては、川野と絽稀和が2人きりで行動しているように思えて、気が気じゃなかったのだ。  ・・・なにもないと、いいんだが・・・。    ガラッ  理科室のドアを開けると、やはり人体模型や骸骨、フラスコ、ビーカーなどが棚に納めてある。  すると愛優が「わあ~っ!理科室!すごい!物が沢山ある!ひゃっはーっ!」とはしゃぎだし、部屋を駆け回った。  そんな彼女を見た絽稀和と川野は顔を見合わせ、また彼女を見た。 「さ、桜木さん・・・急に、一体どうしたのかしら・・・」 「いや、オレにもわからん。頭がおかしくなったんじゃねーか?」  絽稀和が右手で頭をぽりぽりと掻きながら言うと、突然脳にリンとの記憶が浮かんだ。  花咲く野原で、嬉しそうにはしゃぐリンの姿・・・。  だがその先に、黒く大きな闇が広がっている。彼女は気づいていない。ただこっちを振り返りながら走っている。 「リン!だめだ!行かないでくれ!リンっ-!!」  絽稀和は手を伸ばして何かを掴んだ。  すると次の瞬間、ガシャーンっ!!と音がした。  その音で目をおそるおそる開いて、はっとして「リン、大丈夫か、リっ・・・!」  絽稀和が必死に、目の前にいる彼女を心配すると、その彼女はきょとん・・・としていた。 「リン・・・?私は愛優です。桜木、愛優」 「・・・えっ・・・」と絽稀和は彼女を見つめてからあたりを見渡した。 「ここは・・・理科・・・室・・・?」 「そうよっ。絽稀和、あなた桜木さんがはしゃぎまわっている時にぶつかった模型じゃなく、桜木さんの服の裾を引っ張って、2人とも倒れ込んだのよ。お陰で模型が壊れたかと心配になったけど、幸い、そう見られる箇所はないわね」  川野が2人の近くへ来て、床に落ちた模型を確認しながら言った。
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