急速に深まる仲

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「え、えと・・・ごっごめんなっ さっ桜木っ・・・」  絽稀和が愛優に謝ると、彼女は右手を口に添えて笑って言った。 「いいえ、大丈夫ですよっえへへっ」 「な、なんで嬉しそうなんだよっ」  絽稀和が少し照れたようにあぐらをかきながら、口をとがらせて言った。 「だって絽稀和、初めて私の事名前で呼んでくれたんだもの。」  絽稀和・・・愛優が自分の名前を呼んだ・・・!しかも、リンと似た笑い方でそう、言ったのだ。  絽稀和は、彼女がリンに見えて、たまらなく愛おしくなった。  そんな2人を見ている川野は、目を背けた。胸が苦しいのだ。  愛優が、自分と同じように絽稀和を誰も呼ばない、下の名前で呼んだ。  絽稀和は、彼女がリンに見えていて、彼女もまた絽稀和に想いを寄せているのでは、と思えて仕方がなかったのだ。  自分だけ、そんな特別感を失い、さらに嫌な想像をして傷つく・・・という、それほどの事が1度にやってきて、苦しい、なんてものじゃない。辛く、悲しく、切なく、絶望するかのように、川野は1人、心の中で静かに泣いた。  それから、2-Cは毎朝、夏実施の2-C限定学校DE肝試しに向けて力を合わせ、プランを練っていき、そしてついに当日がやってきた!  午後6時 純華学園高等部の校庭には、2-Cの生徒たちが集まってきて、みんな、少し緊張気味だった。  そこに小木先生がやってきて、先生を見た生徒たちは笑った。 「ちょ、先生!何スかそれ!」 「あっはっはっカメラに懐中電灯、丸めた新聞に防災キャップ・・・どんだけ怖がり何ですか!」  すると先生が答えた。 「えっ!?いや、ち、違うぞ!こ、これはだな・・・そっそうだ、霊は本当にいるのかどうかを確かめるためだ!」  小木先生が慌てて理由を作っているのがバレバレで、緊張がほぐれたのか、生徒はみんな笑った。  絽稀和がちら・・っと愛優を見ると、彼女も右手を口に添えて笑っているのを確認してから、再び小木先生を見て笑った。  その様子を見ていた川野は、両手を胸の前で組み、下を向いた。  また、山岡はそんな彼女の気持ちを察するように、同じく下を向き、小さなため息を1つついた。
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