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から1歩踏み出した。
後ろでは、山岡は小木先生と、まだ話をしていたが、川野は絽稀和と愛優の繋がれた手を、ただじっと悲しそうに見つめていた・・・。
カッ・・・カッ・・・
「暗闇って怖いね・・・。前が見えないよ・・・」
「あー、そりゃあ、オレの背中にひっついてるからだろ」
「ひゃあっごっごめん絽稀和っ。私暗いところ苦手で・・・」
さっきは、落ち着いたからもう大丈夫だろうと思っていたけど、やっぱダメダメじゃん。と、絽稀和は思った。
「しょうがねーなあ」と、絽稀和は前を向いたまま両手の手の平を上に向け、後ろへ差し出した。
「え・・・?」
「怖えーんだろ?手つないでやっから、どっちか選べ!」
絽稀和が少し強めに言ったのが逆に安心したのか、愛優は自分の両手でそれぞれ絽稀和の手を掴んだ。
「どっちもかよ。欲張りだな、意外に桜木って」
「えへへっダメかな?」
「いや、その分こっちとしては嬉しいけどっ」
「え 何?今なんて・・・」
愛優が言いかけると、「なーいしょっ」と絽稀和は自分のお腹の方へ愛優の両手を持っていき、愛優は胸の奥からドキン・・・という音が聞こえた。
「これなら怖くねーだろっ?」
絽稀和が明るく言ったからか、愛優は温かい気持ちになった。
「うん、ありがとう・・・」
愛優は絽稀和の背に寄りかかり、眠るような顔で笑った。
後ろを振り向いて、そんな彼女を見た絽稀和も微笑んで、前を向いてそのまま歩きだした。
「どういったしまして~♪」
「何それ」
「ははっなんだろうな?オレもわかんねー」
「絽稀和のくせに」
「桜木のくせに。・・・てかオレら肝試しなのにずいぶん明るくねーか?」
「絽稀和が明るくしてるんだよ」
「はははっそうだなっ」
2人の明るい会話は、道案内の放送が耳に入っていないほど暗闇を照らすように、いつまでも絶えることなく、いつからか2人はふざけ合う犬のように親しくなっていた。
「おかえりーっどうだったーっ?」
体育室に戻ると、コース係の生徒がそこにいた誰よりも早く声を掛けた。
「ど、どうって・・・」
絽稀和がそう言って、右隣にいる愛優を見ると、2人とも下を向いてしまった。
それを見た生徒たちがからかった。
「何、何?なんかあった?」
「2人で秘密の話?俺等聞きてえなーっ」
そんな様子を、川野は遠くの方から悲しそうな顔をして見つめていた。
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