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近くにいた山岡もまた、そんな彼女を辛そうに見つめていた。
「おっおめーら からかうなよ!桜木困ってんじゃねーかっ なあ?」と絽稀和が愛優を見て聞くと、「えーっ?困ってるのは絽稀和の方じゃないのーっ?」とノリよく愛優が言い返した。
すると生徒たちはげらげら笑った。
「十時、おめー1人で恥ずかしがってんのーっ!」
「ぎゃははっ桜木は困ってねえってさーっ!」
それを聞いた絽稀和は愛優に言い返した。
「なっ・・・おい、桜木!裏切んなよッ!」と絽稀和が顔を赤らめて言ったものだから、愛優と生徒たちは「顔赤いよーっ!照れてるのーっ?」とふざけると、「照れてねえっ!」と絽稀和が手で生徒たちを追い払うようにして言った。
するとまた、みんなはどっと笑った。
そこに川野が歩いてきて言った。
「絽稀和、どうだった?あたしたちのグループの障害物。大丈夫だった?」
「え?・・・えー・・・と・・・ごめん見て来なか」
「ああ、それなら、絽稀和が話ながら蹴り飛ばしてましたよ?人体模型だったかな、バラバラにしてきましたよ。本人は気づいてないみたいでしたけどっ」
愛優が気さくに面白がるように話すと、みんなが笑った。
すると絽稀和が言った。
「はあ!?話しかけたのは桜木だろ!?おめーが悪りーんだよ、返事を長く言わせるような話ばっかしてきたんだからなっ」
「へーっ、ってことは私の話がそれ程良い話だったってことじゃない。よかったわねーっこんな私とペアになれてーっ」
「おまえなー・・・」
絽稀和は、桜木が転校してきた4月当初は大人しく控えめで、あまり人と話さないような少女だったのに、それから数カ月でこんなにも気さくに面白い事を話す少女に変わっているのを、心底とても嬉しく思っていた。
それも必然だった。
だってそれが、‘リン’だったのだから-。
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