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ない。 絶対に・・!
そんな山岡の気持ちに気付いていない川野は、愛優やクラスの女子たちと、教室でメイドの衣装をちくちくと縫っていた。
「何かを作るって楽しいよねっ」
愛優が、すぐ近くで同じように縫っている女子たちに声を掛けると、女子たちは、「ねーっ。裁縫って女子の特権じゃない?」と言う子もいれば、「こういうの嫌いな女子ってあまりいないんじゃない?」と言う子もいた。
愛優はそんな意見を聞いてから、左隣にいる川野を見て言った。
「仁南さんは、どう思・・・」
そこまで言うと、愛優は言葉が詰まってしまった。
愛優が見た川野は、目を細め、やつれた顔をしていたからだ。
「だっ大丈夫!?仁南さんっ!」
愛優は川野を抱くように肩に手をまわして心配した。
「らいりょーるよ(大丈夫よ)・・・あらり(あたし)、はいほう(裁縫)・・・ろるいららら(得意だから)・・・」
川野がそう、愛優を見て少し微笑むと、愛優や近くにいる女子たちがさらに心配した。
「大丈夫っ!?仁南さんっ!」
「仁南、ムリすんな!」
「裁縫苦手なのわかったから!」
愛優や女子たちが心配すると、川野が突然、がくん・・・と頭を下げたことによって、教室の一部は騒ぎになった。
「仁南さん!大丈夫っ!?どうしちゃったの!?」
愛優が川野の背中を揺らすと、1人の女子生徒が川野の顔を下から覗きこむと、うなずいて言った。
「・・・うん、完っ全に寝てるね・・・」
その後 彼女に自分のボロボロでよれよれなブレザーを背中にかけてあげたり、川野の分の衣装作りを手伝った愛優を、女子たちは感心したのだった。
文化祭 当日。
快晴に恵まれ、2-Cのメイド喫茶は、オープンまで15分という時だった。
女子たちは教室の隣の部屋で、自分たちで作ったメイド服に着替え、男子たちはスーツに着替え、店の準備をしていた。
シャッ
「じゃーん見て見てーっ あたし似合うーっ?」
1人の女子が、隣の部屋からカーテンを開けて教室へ入って来た。
絽稀和は、はっとその声がした方に、テーブルを拭いていた手を止めて、振り向いた。
・・・違った。彼女じゃない。彼女はあんな入り方、言い方をしない。第一自分のことは私、と言う。
そんな考えをしながら、がっくりして自分の仕事に目を戻した。
「うっわ~っ可愛い 桜木さんっ!ほら、みんなに見せよっ♪」
その川野の声に、絽稀
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