重なる過去 ~リンと愛優~

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いて、絽稀和は、ばっと彼女の横顔を見た。 「ある日、私その親戚の人の家を飛び出したの。そしたら道で1人の警官に家を聞かれたわ。私は、家はない。お父さんもお母さんもいないって言ったわ。そしたらその警官、ある児童養護施設を紹介してくれて、一緒に見学にも行ってくれた・・・。その警官に出会ってなかったら、私今頃どうなっていたか・・・」  絽稀和はそこまで聞いて、1つ質問をした。 「じ、じゃあ今はどこに暮らして・・・」 「古着屋さん。いつもそこで制服代わりに洋服を借りているの。そのお店の人は、母の妹さんで、さっき話した警官が色々手配してくれていたみたいで、養護施設に私宛てで手紙をくれたの。 キミのお母さんの妹さんが、是非内の店に来てほしい、一緒に住もうよ、と言っていたよ って内容だった。私嬉しくて号泣したわ。初めて、生まれてよかった。諦めなくてよかったって。私がその妹さんの家に住みだした後も、その警官はちょくちょく様子を見に来てくれたり、色々気にかけてくれた・・・。  愛優はひと通り話終わると、はぁーっとそっと胸をなで下ろしていた。  絽稀和はそんな彼女を見て、抱きしめたくなった。  この子はなんて志の高い子なんだ。芯の強い子なんだと思った。  幼い頃に両親を亡くし、認知症の親戚の家を飛び出し、その後偶然出会った1人の警官に救われ、今、亡くなった母親の妹の店で暮らしている・・・。そんな逆境にもくじけず、ひたすらまっすぐ自分の道を生きてきた彼女に感動したのだ。   リンが、そうだったように-。 「でね、私は児童養護施設にいる時、小学校の1年生~6年生の勉強をひたすらしていたわ。それで、ぎりぎり小6の秋やっと小学校に入れてホッとしたのも束の間。私 暗くて地味で友達と言える子はいなかったの。だから、休み時間や新しく母の妹さんの家に帰ってからもずーっと机にかじりついて、みんなに追いつかなきゃ その一心で毎日勉強して気を紛らわせていた。小学校を卒業して、次は中学校。中学も中学で、勉強はもっと難しいし、スピードが速い。おまけに友達もいなくて、嫌な毎日だったわ・・・。それでもなんとか中学は卒業して、高校に進学した。・・・そう、レベルが最下位、頭が悪いといわれる中川高校。そこでは、私テストで平均点以上は取れるようになって、高1の冬には学年トップになって、先生にも いい高校に編入したらどうだ
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