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和が、息切れをして「ごめん、遅くなって!」と愛優に駆け寄った。
愛優は「ううん、全然っ!」と満面の笑みで返すと、絽稀和も安心して微笑んだ。
すると絽稀和はあることに気がついた。
「あれ、桜木・・・服・・・。それ、古着・・・なのか・・・?」
「はい。ワンピースとカーディガン、シュシュは古着です。でも、このカバンと靴はルイさん・・・あ、母の妹さん・・・におねだりして、買ってもらったんです!・・・昨日っ!」
「えっ昨日っ!?もう、お母さんじゃんっ!」
「えへへっ・・・!」
愛優の母の妹、ルイは、愛優を実の娘のように接してくれている・・・それだけで、絽稀和と愛優は喜びを分かち合える仲で、言葉にできないほどだった。
水族館まではここから歩いて50分の所にある。
しばらくは2人共仲良く話して歩いていたが、あまりに話が盛り上がったからか、時間を忘れてゆっくり歩いてしまっていた。
今は午前10時10分。水族館は11時に午前の部が終わり、午後13時から午後の部として再開する。
「まっまずい・・・!桜木、バス使おう!このままじゃ午前の部が終わっちまう!桜木は早く行きたいだろっ!?」
「え、で、でも・・・っ!」
そんな2人の横をバスが通り、すぐ先のバス停に止まった。
「桜木、今ならきっと乗れるよ!」
絽稀和が愛優の肩をぽん、と叩き、横断歩道を渡り、バス停まで走って行ってしまった。
愛優が「ま、待ってっ・・・!」と慣れないヒール靴で必死に走ろうとすると、かくっと足首をひねってしまい、横断歩道に倒れてしまった。
「いたたっ・・・」
絽稀和は行ってしまったバスを、ああ・・・と見送り、「桜木、バス行っちゃっ・・・」と後ろを振り返ると、愛優の倒れた横断歩道に黒い車が暴走して走ってきたのを見た。
「桜木ィっ・・・!!」
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