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またあの時のように大切な人を失うのか。
またあんな苦しい思いをしなきゃならないのか。
あの後悔を繰り返すのか。
せめて、あの時想いを伝えていれば、守ってやれていれば-!!
キキキーーーーーーッ!!
絽稀和は愛優に飛びつき、そのまま反対側の歩道に転がりこんだ。
ブロロロロロ・・・・・・。
はぁ、はぁ・・・。
絽稀和は息切れをして目を開くと、愛優がいた。
彼女は絽稀和の腕の中で、目に涙をいっぱいに浮かべながらこっちを見ていた。
「よかった、桜木が、無事で・・・。本当に」とホッと安心すると、「本当によかったあっ!!」と愛優は絽稀和の言葉を遮り、絽稀和に抱きついて、安心のあまり、うわああああんっと泣き叫んだ。
「・・・ぇえ?」と絽稀和が聞くと、愛優が鼻をすすりながら言った。
「・・・っだって、絽稀和が、ズズッ、車すれすれで、私に、ズズッ、飛びついて来たから、絽稀和が、ズズッ、轢かれる、ズズッ、んじゃないかって、ズズッ、不安で・・・っ!・・・よかった・・・ズズッ、絽稀和が、無事でっ・・・本当に・・・っ!!」
そんな彼女を見た絽稀和は、微笑んで言った。
「ははっ桜木、鼻水出てるっ。一応女子なんだから、鼻かもうぜっ?」
そう言った絽稀和を見て、愛優は、満面の笑みで鼻をすすって言った。
「もうっ、一応 は余計っ!」
2人は笑って、絽稀和は愛優に手を差し伸べ、愛優はその手をとり、近くの公園で休むことにした。
「はい、オレンジジュース」
絽稀和はベンチに座っている愛優に、右手で缶ジュースを渡して、自分の分の飲み物を左手に持ったまま、愛優の左隣に座った。
「私 コーヒーだって飲めるよっ!高3になるし、子供じゃないんだからッ!」
愛優がそう言うと、絽稀和は驚いた。
「えっ!?コーヒー飲めんのっ!?・・・すげーっ・・・」
「なあに?絽稀和もオレンジジュースぅ?子供ねーっ。コーヒーすら飲めないなんてっ!あーかわいそっ」
愛優は絽稀和の左手を覗きこんでから、見下すようにして笑った。
「はははっ・・・!」
絽稀和は笑ってから、下を向いて微笑んでいる愛優を見て言った。
「・・・少しは、落ち着いた?」
「・・・うん、ありがと・・・っ」
下を向いたまま両手で缶ジュースを持って照れている愛優を見てから、澄み切った青空を見上げて、絽稀和は言った。
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