君との記憶

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ってくれたのか・・・?・・・っ、わからない・・・!リン・・・っ!」  絽稀和は前かがみになって両手で頭を抱えた。    絽稀和・・・まだ、リンちゃんを・・・。  愛優がそう思って絽稀和の右肩に左手を置こうとすると、絽稀和が言った。 「・・・っだけど、オレは、もう1人のリンに出会った」 「え・・・?」 「・・・幼い頃に両親を亡くした。母親はリンを生んだ時、持病の発作で、母親はリンを優先してくれ、と助産員に頼み、自分を犠牲にしてリンを守った。そしてその後、数分もかからずリンの母親は亡くなった-。父親は、母親が亡くなった数日後・・・妻を亡くしたショックと、リンを1人で育てられなくなり、絶望して、自宅で首つり自殺を図って自殺・・・。その後は、リンは親戚の紹介で児童養護施設に預けられた・・・。オレがリンと出会ったのは4歳の時・・・。オレは母さんと散歩していた。その時、リンがいるその養護施設の前を通りかかって、庭の砂場で1人で遊んでいるリンと目が合ったんだ。オレはすかさず手を振って笑った。すると、驚いたのか顔は真顔で手を振り返してくれたんだ。そんな日が続いて、そこの施設長が急にあることを言い出した。「もしよろしければ、この子、リンを預かっていただけませんか?」って・・・。オレとリンがいつも手を振り合って笑っていたのを見ていたらしく、オレの母さんに施設長がお願いした・・・。母さんは、一瞬悩んだみたいだったけど、その場でOKしてくれた。オレとリンは嬉しくて、毎日オレの家の庭で1日中2人で遊んだんだ。その時オレは、リンと遊ぶその時間が何より大好きだった。・・・そんなある日、あの事故は起きたんだ。幼い頃に両親を亡くし、児童養護施設に預けられ・・・そんな逆境にもくじけず、ひたすら真っすぐ自分の道を生きてきたリン・・・それが、桜木なんだ。オレは初めて桜木と出会った高2の春、右手を口に添えて笑うのがリンと同じ癖で、つい見入っちまったんだ。その時・・・初めて会った頃は、やっぱり内気で、貧しくて、1人ぼっちな少女だった。けど、彼女は太陽に向かって頑張って上を向き、大輪の花を咲かせる華のように、明るく気さくで、生きることを諦めずに、自分を見失わずに純粋に1つの小さな桜を咲かせた1人の少女。オレはそんなリンに・・・いや、桜木に心惹かれたんだ。」  そう言って絽稀和は愛優を見て微笑んだ。  愛優は
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