14人が本棚に入れています
本棚に追加
それ以来、彼女はいつも裏庭に来てお昼を食べた。月子ちゃんと呼べば、彼女は嬉しそうに笑った。私は上手く笑えないので彼女の笑顔が眩しかった。
「なずなちゃん。禁断の恋の噂を知ってらして?」
「…禁断の恋?」
女子校で禁断の恋。それは教師との恋か、はたまた女性同士の恋なのだろうか。私はお茶を啜りながら考えた。
今日も裏庭は私達しかいない。天気が良く、緑溢れた学校は公園みたいだ。バラ園もあるのだから物語特有の色恋もあるのかもしれない。
「昔、教師と恋に落ちた生徒がいたみたい。逢瀬はいつも学校の隅にある教会。ステンドグラスが綺麗な教会で愛を囁きあうの…」
月子ちゃんは恋に憧れを持った女の子なのだろう。目をキラキラさせて話す彼女はとても素敵だと思った。
「とってもロマンチックよね。私もそんな男性と知り合えたら……そういえば、なずなちゃんは中学は共学だったのでしょう?素敵な恋人はいらして?」
「え」
私は目を丸くさせた。そして思い出すのは、彼。私せいで捕らわれている彼。
「…その人達はどうなったの?」
「そうそう。なんと御家族と先生方に知れてしまって……生徒の方は哀しんで自害なさったそうなの」
月子ちゃんは悲しげに呟いた。私は学校の隅にある教会を思い出す。カトリックではないが授業の一貫で教会で祈りをしたことがある。
そこには危ない霊はいなかった。
自害した霊は地縛霊になり、その場や周りにいる人に影響を与えると先生が言っていた。
「一人で死んだんだね…」
「教師の事は詳しくは分からないの。でも噂だと辞めさせられて、学校から消えたらしいの。それ以来教会には彼女の幽霊が出るらしいわ」
最初のコメントを投稿しよう!