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一人で教会に残っている霊。恨み辛みが強ければいずれ地縛霊になるとも先生は言っていた。 「そうだわ。教会に行ってみない?」 「え」 月子ちゃんは平らげたお弁当を鞄にいれて立ち上がった。今度は好奇心旺盛な顔つきだ。お嬢様は怖い話は苦手なんだと思ってたけど彼女は違うらしい。 好奇心が強い人は止めても無駄だということを私は知っている。先生が好奇心の塊だからだ。 「…分かった。行こう」 「ありがと。なずなちゃん」 彼女は私の手を取ると駆け出した。小さな手。 誰かと手を繋ぐなんて何年ぶりだろう。 教会はやっぱり異質な空気は感じなかった。誰もいない空気はあったけれど、月子ちゃんは安心したように息をついた。 好奇心旺盛に振る舞っていたが実際は怖かったのだろう。私はゆっくり辺りを見渡した。 いる。 窓辺に佇む生徒がいた。黒髪の彼女は外を見つめていた。 だが、私達に悪意を感じない所をみるとやはり地縛霊では無いみたい。 「なずなちゃん。お昼休みがもう終わってしまうわ。行きましょう」 「…うん」 「やっぱり、ただの噂なのかしら。本当は空想物語なのかしらね」 空想物語。月子ちゃんは笑いながら教会の扉を閉めた。 重い音が頭に響いた。 空想物語。見えない人から見れば何もないのだから誰かの空想物語だと思うのは当たり前。 けれど、私が見た彼女は悲しげだけど。ずっと外を見つめていた。真っ直ぐ、何かを見つめるように。 私はその目を知っている。
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