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私は教会を外から見つめていた。何か起こるわけでもない。ただ、私はあの目を知っている。
腕にしているクリスタルの数珠が震えた。もうバスが過ぎてしまった時間だ。それでも私は彼女が気になって動けなかった。
「ごきげんよう。一年A組の星谷なずなさんですね」
「…ごきげんよう。校長先生」
振り替えるとほうきを持った校長先生がいた。彼はバラ園にいるか、学校を掃除しているか、どちらかの姿しか見たことしかない。今は掃除をしていたのだろう。
「教会に何かご用ですかな?」
「…校長先生はこの学校に長く勤めていると聞きました。あの噂は本当は違うのではないですか?」
校長先生は目を丸くさせた。そして、ゆっくり教会を見つめた。
「教師と恋に落ちた生徒の噂ですか?」
「…彼女は自害では無いのでしょう?」
自害したのなら地縛霊。彼女は違う。
「……いやはや、直接聞いてくる方は初めてですね。そうですね、過去確かに教師と恋に落ちた生徒はいました」
校長先生は懐かしそうに笑った。音楽専攻の楽器の音が聞こえてくる。この学校は音楽で溢れている。
私はそれが嫌いではなかった。
彼女もこの音を聞きながら過ごしていたのだろう。
「…彼女は音楽専攻の生徒でした。優秀で素晴らしい生徒でした…二人の事が知れた時、周りは大騒ぎでしたね」
「校長先生は相手の方を知っているんですか?」
「えぇ。とても良い先生でした。ですから、あの二人の結末は残念でしたね」
校長先生は悲しげに目を細めた。私は彼女の目を思い出す。外を見つめていた目。
あれは。
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