最終章・これから先のことなんて

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「ねえ、明日からの出張の支度もう出来てる?」 竹下さんがふわりと微笑みながら俺を振り返る。 「もちろんまだですよ。でも、男の俺の支度なんて簡単ですから。竹下さんは?」 「聞かなくても分かるでしょ」 「……はい。明日、遅刻しないでくださいね?」 明日から本格的に新しい仕事が始まる。 新しいクライアントとの初めての打ち合わせは、相手の都合でずっと西の方で行われることになった。 あちらが東京に来てから打ち合わせ始めれば? とかなり渋った黒埼さんを必死に説得し、竹下さんは2人で初めての遠方出張を勝ち取ってきた。 「クライアントの方がまだ向こうでお仕事してるなんてちょっとラッキーでしたね。 観光の時間とか少しくらいは取れるかな…」 「柿本くん。私たちは仕事をしに行くんだよ?」 「分かってますって。でもせっかくなんですから 地元のグルメくらいは食べません?」 「私はね、焼きカレーだけは外せないと思うの。絶対に!! 後は焼うどんかラーメン。それと出来たら若松焼きも!」 「……俺より全然その気じゃないですか。いつの間にそんなに調べたんですか。 ってか、若松焼きって何?」 「なんかね、ぺったんこなやつ。女子が絶対好きそうなやつ」 「へえ。女子、が」
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