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所詮、神様が生み出したフィクションでしかない僕の、これまで歩んできた青春は、穏やかで平凡なまでも幸福な時間だった。
それだけが僕の世界で、それだけが僕の全て。
いつまでもそんな風に真実を知らずに、ずっと勘違いして生きていけていたら、あるいは。
あるいは、僕も彼女も互いの傷を抉り合うことはなかったのかもしれない。
後悔はある。正直知らなければよかったのにと。
だけど確かにあの出来事は僕を、僕等を紡ぎ、一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。
自分自身と向き合うチャンスをくれた。
さあ、今こそまた始めよう、僕らの物語を。
夕凪の海岸で六つ、鳴き砂が音を響かせる。
それぞれの明日へと向かう、僕等の足音で。
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