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 ぼろ雑巾のようなタオルで顔を拭きながら、結城耕平のことを考えた。ふとした時には常に彼のことを考えている。  ………まるで、初恋の相手のようだな。  頭に浮かんだ言葉があまりにも馬鹿ばかしくて、思わず声をあげて笑った。コンクリートの壁に囲まれた部屋にその声が反響して、死霊たちの舞踏会が一瞬のうちに行われて終焉したように、孤独な暗闇の中に溶けていった。  何が初恋だ。自分が抱いている感情はそんな脆弱なものではない。しかし……。  鏡に映る自分の、返り血で汚れ、憔悴した姿を撫でた。  私はいつまで、復讐を続けるつもりなのだろうか。  結城耕平が死ぬまで? 敵を皆殺しにするまで?  たとえこのまま復讐を続けても、死んだ人間が生き返るわけではない。失われたものを取り戻すことはできない。砂漠には恵みの雨が必要なのに、私が降らせているのは血の雨だ。そしてそれは、決して潤いを与えることはなく、ただ渇いて干からびていくだけだ。 「そんなこと言って──」  鏡の中の顔が醜く歪み、口を開く。 「本当は怖くなったんじゃないの? 結城耕平が、あなたのことを……」  バリン! こぶしを振り上げて、鏡を叩き割る。  違う! そうじゃない。  渇くのは、苦痛が足りないからだ。殺しても満たされないなら、私と同じような絶望を彼らに与えればいい。大切な人間を目の前で失う苦痛を!  血まみれになった神崎ハルカを抱きしめ、苦痛で泣き叫ぶ結城耕平の姿が私の頭をよぎった。
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