【2】

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 * * *  気がつくと、僕たちは建物の中にいた。長い間放置されて荒れ果てた、だだっ広いビルの一室のようだった。むせかえるカビの匂い。散らばったガラスの破片。  遠くで銃声が聞こえて、僕はハルカの手を握って走り出した。  ――ここにいてはいけない。逃げないと。  銃声がそう思わせたのか、それとも現実離れした廃墟のせいか、何が原因でそういう思考に至ったのかは自分でもわからない。もしかしたら本能というやつなのかもしれない。  逃げる僕たちを誰かが追ってくる。そいつから離れるのに必死で、どんなやつなのかも知らないが、確実に銃を持っている。  いそげ! 少しでも遠くへ。  焦る僕の右手にグンと負荷がかかる。振り向くと、ハルカの足が止まっていた。 「ハルカ! 早く逃げないと」 「どうして、逃げるの?」  ハルカは俯いたまま話す。 「このままじゃ二人とも殺される!」 「……殺される?」 「あぁ、そうだよ。……ハルカ?」  彼女の様子がおかしいが、長い前髪に隠れて表情が読めない。そうしている間にも、銃を持ったそいつは眼と鼻の先くらいまで近づいてくる。 「逃げる必要なんて、ないじゃない。だって――」  ハルカが顔をあげる。白く綺麗な顔が赤黒い液体によって染まっていた。眉間に穴があいていて、そこから流れる血が眼球をわたって顎からしたたる。  ――だってもう、死んでいるのに。
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