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 男性の呻き声のような、助けを求めるような声が聞こえた。それに追い討ちをかけるように、銃声がもう一発。  しかし、声の主も銃を持った人間も、それどころか道を歩く人さえ見当たらない。ただ積み重なった墓石が、静かに建っているだけである。  やっぱり、今回もそうだ。  僕は窓に鍵かけてカーテンを閉じた。押入れから布団を引っ張り出して、頭からかぶる。こうしていると、いくらか落ち着くのだ。  ここ数日、僕は幻聴に悩ませれている。だから今回のこれも、きっと幻聴だ。四発の銃声も、呻き声も、すべて幻聴なのだ。  カツン、カツン…………。  アパートの階段は鉄製で、誰かが歩くと音がする。  カツン、カツン……。  三階には部屋が四つあるのだが、今は僕以外の住人はいない。  これも幻聴なのだろうか。階段を登る音が近づくにつれて、心臓が早くなる。  カツン、カツン!  足音は玄関の先、ドアを挟んだ向こう側で止まった。  ピンポーン。呼び鈴が鳴る。
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