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「お前は……、お前達は自分の殺した人間を覚えているか?」
そのような質問に意味などないことは理解していた。お互いに、そういうものなのだ。
「死んで詫びろ」
そう小さく呟いて、引き金をひいた。乾いた銃声と共に、男は息絶えた。
人を殺した。だがそのことに対して、何の感情も沸かなかった。満たされるわけでもなく、癒されるわけでもない。まして、罪悪感のようなものなど微塵もなかった。これはただの作業だ。
さて、次は……。
堤防の向こう側。西日を正面から受けたアパートの三階にある部屋を見つめた。
結城耕平。私の人生というのは、つまり、そいつの為にあると言っていい。これは復讐だ。私の大切な人を奪った奴等への……。
私は石を積み上げた墓をちらりと見て、泣きたい気持ちを抑えるように目を閉じた。
堤防の斜面を滑るようにおりてアパートに向かう。アパートは鉄筋コンクリートで造られた三階建てで、正面以外をコの字にブロック塀が囲んでいる。
塀の角から住人らしい男女の二人組みが出てきて、咄嗟に手に持っていた拳銃を服の下に隠した。
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